ジャニーズWEST LIVE TOUR 2022 Mixed Juice に行った話

初めてのジャニーズWESTのライブ、4月28日に制作開放席で行ってきました!
制作開放席って、都市伝説じゃないんですね。

座席は4F最後列のいわゆる天井席。上手の外周が完全に死角。
でも、会場のぴあアリーナMMは箱型構造なので、すり鉢型構造のアリーナと比較するとステージとの距離はかなり近い。

以下、印象に残ったことを(ネタバレ+神ちゃんかわいいbotです)

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LUNGSを見た話

神山くん主演舞台『LUNGS』、大千穐楽おめでとうございます。
無事に幕が上がることが当たり前ではないと思い知らされたり、年末進行を縫うような鬼スケジュールの東京延期公演が組まれて*1勝手に心配したりしましたが、全33公演、終わってよかった。

 

この公演が発表になったとき、ざっくりあらすじを調べて、男女のプライベートなところに踏み込む内容だったから躊躇したけれど、やっぱり、自担の初単独主演舞台は見たいわけで。
めちゃくちゃ緊張しながら、12/17に見てきました。
見終わってしばらく動悸が治まらなくて、胸がザワザワしていた。 
だって、とんでもないものを見てしまったから。

 

暗転が一度もない。
役者のしぐさや呼吸で場面が変わる。
時間も進む。
素舞台で背景も小道具も何もない。
二人の役者と観客の想像力の共同作業のような100分間だったから。

 

概要

同棲してる若いカップルが子供を持つべきか否かというところから始まり、世界情勢、環境問題、ジェンダーギャップetc...フォーカスが様々なところに移り替わりながら進んでいく会話劇。
戯曲のト書きには

「この作品は、素舞台で上演されることを想定している。

背景も、家具類も、小道具も一切なく、マイムもしない。衣装変えもない。照明変化や音響で時間や場所の移動を示すことも行わない」

とある。

 

私の考えるMとW

男性(M)はパッとしないミュージシャン。20代後半。
主体性に乏しく常に受け身、優しく包容力はあるけれど、流されやすくて優柔不断。非喫煙者

 

女性(W)は博士課程の大学院生。専攻は環境学とか社会学とか。Mより1,2歳年上。
頭がいいが、頭がよすぎるが故に考えすぎるこじらせ系。感情の起伏が激しい。喫煙者。

 

どうやったらこの二人が出会うんだろう?ってくらい正反対な二人。
WがMのライブを見に行って、Mにゴリ押ししたとか?知らんけど。

 

公演はこんな感じで始まった

開演時間になっても客電が落ちることなく「よろしくおねがいしまーす」と素のままの二人が登場。
ぐるっと会場全体を見渡し「お、男性発見」と嬉しそうな神ちゃん。
ストレッチしたり発声練習をしたりしながら、最初の立ち位置にスタンバイ。バチバチの対決が始まる前を思わせて、こっちまでヒリヒリする。
向かい合った状態で気合を入れるように神ちゃんが左胸をバンって叩いたら、思ってたよりも大きな音が出て笑っちゃう客席。つられて笑う奥村さん。

「え、なんか面白いことした?」

「いや、思ったより大きい音やったから」

なんてやり取りをしつつ。
最初のセリフをきっかけに客電が落ち、一気にLUNGSの世界に引きずり込まれる。

 

盛大なネタバレと、薄い考察という名の感想

※文中のセリフは記憶をたどったものなので正確ではありません。
※パンフレットからの引用もあります。

 

一言目のセリフはWの「赤ちゃん!?」だったわけだが、なぜMは子供が欲しいと言い出したのか。しかもIKEAで。
周りに家族連れがいてここでなら言えるって感じだったのかも知れないし、「子供かわいいなーほしいなー」って感じだったのかもしれない。

 

Wは子どもが欲しいと言い出したMと話をするんだけれど、会話というよりも「話しながら考えるから何も言わないで」と一方的にまくし立ててる感じ。(ここの奥村さん、圧巻。かっこいい。)
完全に尻に敷かれてるM。物理的に尻も叩かれるM。
IKEAからの帰りの車の中や家で晩酌しながら会話を続けるんだけど、ほとんどWがしゃべってる。
子どものころぼんやりと思い描いていた、母親になる自分。
一方、研究者としてキャリアを積んでいく自分。
所謂「女の呪い」の話は、いつ聞いてもしんどい。

 

確かこのあたりでMが「賢くない人間ほど子ども多く持つけれど、賢くない人間は子どもを持つべきではない」と優生論的な話をするんだけれど、Wの逆鱗に触れないようにしているのか、結論をふわっと着地させていて、自分の意見はないのか!とちょっとイライラ。
そのくせ、養子を迎えるという提案に対してはきっぱり反対していて、血縁というものにこだわりを持っているっぽい。子孫を残したい本能もありそう。

 

とりとめなく話すWだけど、Mとの会話の中で親になることに前向きな自分の真意に気付く。会話って大事だよね。
Mが「君は君のお母さんのようにはならないよ」って言ってて、Wの母親に子どもを持つことに対して消極的になったキッカケがありそうな雰囲気。
でも簡単に結論は出ないから「とりあえずこの話はやめよう」って言うM。
安易に答えを出さないことも大事。答えを出すことから逃げたようにも感じたけど。

 

男女の決定的な差が見えたセリフがいくつもあった。

 

「いつまでも小さいままじゃないんだよ?だって人だから」

「正直、その瞬間のことしか考えてない」

 

女は先のことを考えなきゃならないけど、男は目の前の欲望のことしか考えない。
この、古代から続く(と思われる)隔たりは絶対に解決できない気がするんだよなぁ。

 

Wは自分の体に起こるであろう変化を戸惑いを感じているし、子供を作る行為は神聖なものとして扱いたいと思っている。
それをわかってないMはWを欲望のまま強引に抱くんだけど(子どもの話してから何週間もお預け食らってるっぽいから、ちょっと不憫だとは思う)、ベッドの中でWに「時々足から下を切り落とされたように感じる」と言われてしまってショックを受ける。
その後、Wは必死にフォローするんだけど、思ってもないことは言葉にはならないと思うんだよね。だから、きっとWの本音、もしくは深層心理。
このシーン、Twitterで神山担がめっちゃざわついてたけど、私は「これだから男は!!」ってなってた。
とっても雄でえっちでしたけど!

 

その後、Mは就職し、Wとの時間が減っていく。寂しいWは一緒にいる時間を増やしたいし、スキンシップを取りたがる。環境の変化がWの心境にも変化をもたらしたんだろうか。公園でピクニックする約束をするんだけど(Mの約束の仕方がすごく雑で笑った)、仕事を入れてしまっていて焦るM。でもWのことを優先させる。けど、公園のトイレでいたすのは流されすぎ。

 

妊娠が発覚したときも(妊娠検査薬のシーンのMにはちょっと引いた)男女の差が見えた箇所。
早く親に伝えたいWと躊躇するM。子どもについて言い出したはずのMのほうがネガティブになってるのは、「その瞬間」の先を考えられなかったからなのか、「万が一」を考えてしまっているからなのか。この「万が一」は無事に生まれてくるかわからないだけではなく、ハンデを負って生まれてくる可能性を含んでいるんだけど、Wは「わたしたちの一部なのだから、たとえどうでも愛するようになる」と返す。母親になる人はみんなそう思うんだろうか。わたしの母もそう思ってくれたから、わたしがここに存在するんだろうか。

 

「万が一」について話し合った後、眠れないMの独白がWとの関係やMの本質を象徴していた気がする。

「本棚から本を持ってくる、どの本にも君がアンダーラインを引いたあと。余白には星が書いてある。君がハイライトした文をじっと見つめる。その段落をもう一度読んでみる。僕には見えない何がこの人には見えていたんだろう?僕が理解していないことは何だろう?」

Wの考え方に影響されがちだけど、すべてを完璧に理解しているようには見えなかったし、Wのことも理解しているわけではない。でも、理解しようと努力はしていて、これも愛の形なんだよね。

 

胎動を感じて二人ではしゃいで(神ちゃんのアドリブで観客も奥村さんも笑っちゃってご満悦だったかわいい)、子供部屋を用意して、その日が来るのを待っていたけれど、おなかの子は死産してしまう。
「またタバコ吸える」と笑ったあと「何がいけなかったのかな…」と泣き崩れるWが痛々しい。しんどい。このあたりから涙が止まらない。
何もすることができなくなったWにどう接することが正解なのかわからなくなったMは、多分Wから逃げたくて新しく入った派遣とキスしてしまい、それをWに告げる。…クズだなぁ。流されすぎなんだよ。
それを発端にWはMにしてほしかったことについて話すんだけど、結局食い違いが積み重なって二人は別れてしまう。

 

Wの母親が亡くなったことをきっかけに二人は再会する(多分何年か経過している)。お互いに様々な変化がおきている。Wはタバコをやめ、大学院を修了して博士に。Mの父親も亡くなっている。再び音楽を始め、喫煙者になっている。本を読まなくなり、記憶も曖昧だと弱音を吐く。一瞬病気になったのかと思ったけど、Wと別れた喪失感みたいなものなのかな。
なし崩しで抱き合った後(二人の弱さが表れてる)、離れていた時の恋愛について話題が及んで、Mが結婚間近だと知ったWは「もう会わないほうがいい」と告げる。

 

後日、「ねぇ。わたし光って見えない?」とMに妊娠したことを告げに来るんだが(序盤と比較すると妊娠に対してポジティブになっててびっくりした)、近くに婚約者がいると知ると立ち去ってしまう。
追いかけてきたMに、Wは自分で事実を伝えると言い張る。
「いい人間でいたいのに、あなたのフィアンセにとって私は悪魔だ」
いつでも正しくいたいと思っているWにとって、自分の言動で誰かを傷つけることは許せないことだよね。
自分にとって正しいと思った行動が誰かにとって間違ったことになるって、生きてると結構な頻度で遭遇する。
分かれ道に立ったとき、選択を間違えないようにと思うのは当たり前だけど、仮に間違った選択をしたとしても、その選択を正しくするためにどう生きるかって大事だな、なんてことを思う。

 

結局、Mが婚約者にすべて話し、物理的にぼこぼこにされ婚約は破棄(当たり前)。

 

Wが子供をあきらめるようなことを口にしたとき「僕たちもう親なんだよ!」と言ったMにおぉ!ってなった。先のことを考えられるようになってるし、Mは子供の3人で生きていこうというシーン、かっこよかった。

 

「君は僕を怒らないようにしなきゃならないし、僕は君を怒らせないようにしなきゃならない。成長しなければならない。森を植えるんだ。君と僕、それから小さな点。一万トンのCO2。僕たち3人で

 

二人は結婚して、子どもが生まれ、育ち、巣立っていく。
二人は年老いて、Mが先立つ。
WはMの墓前で、「愛してる」と口にして、終幕。
MはWに何度も「愛してる」と伝えて来たけれど、WはMが生きている間にちゃんと愛を伝えていたんだろうか。
好きとか、ありがとうとか、伝えたいときにちゃんと伝えなきゃね…

 

理性と欲望の間で

二人の言動を思い返すと、実は矛盾だらけだったことに気付く。
この矛盾の根底にあるものはおそらく欲望だ。
SDGsについて語りながら熱いお風呂に入ってCO2を排出し、
子どもを作る行為は神聖でなければいやだと言いながら、授かったと思われるのはMに仕事を放り出させた公園のトイレやWの部屋のソファで抱き合ったときで。
パートナーに「愛してる」と言いながら、他の女とキスをする。
婚約者がいるのに元カノと寝る。
良い人間であろうとしているのに、誰かにとっては悪魔になる。
どれだけ立派と言われる考えを持っていても、高尚なことを言っていても、愛の言葉を紡いでも、結局人間は欲望には抗えない。
それでも、欲望に抗ってでも達成しなければならない、何かが存在している。
判ってて見ないフリをしてたこと、忘れてたこと、気付かずにいたこと、その全てを目の前に突きつけられて「さあ、答えを出せ!」と迫られている気分。
人類に突きつけられた課題は大きい。

 

タイトルが意味するもの

LUNGS=肺。
対の臓器。左右で少し形が違う。
それは、折り合いをつけてでも共にいるMとW、欲望と理性、表裏一体で存在するものの象徴なのかもしれない。

 

舞台俳優・神山智洋

俳優には映像向きの人と舞台向きの人がいると個人的に思っている。セリフ回しとか立ち振る舞いがどちらで映えるかって話なんだけど。
神ちゃんの演技のお仕事はアルバムの特典映像とかで見た程度だったんだけど、この子は映像より舞台映えするって直感で思ったんです。
思ったとおり、というか、想像の上を行っていた。
雑誌で「演技のお仕事はお邪魔しますって感じ」と言っていたけど、もっと舞台のお仕事してください!

 

おわりに

「アイドル」というカテゴリーに属している人によくこの内容の戯曲の主演をオファーしたなと思っていたけれど、多分神ちゃんじゃなかったらMはただのクズだったんじゃないかと思う。神ちゃんだから受け身で主体性がなくて優柔不断でクズだけど、かわいくてちょっとアホで包容力があって優しくてかっこいいMになったんだろうし、感情の起伏が激しくて時々ヒステリックにすら思えるWも、奥村さんだったから賢くて賢すぎるが故に臆病で、強くてかわいくてかっこいいWになったんだろう。

 

自分の心を削って、見た人の心を抉った神ちゃんと奥村さん、素晴らしかったです。 

 

またこの二人で見たいと思うし、降板された谷村さんのと共演も見たいし、別のキャストで再演されたとしてもまた見たいと思うくらい素晴らしい作品でした。

 

一生、抱えて生きていきます。

*1:予定していた共演者の体調不良による東京公演が延期された